2017ライトエロ品評会

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不確定性セックスフレンド (1)/東野みかん
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◇趣味を分かち合う同じ大学のむっちり先輩と、突然部屋に押しかけてきたもっちり幼馴染との三角関係ラブストーリー。
掲載誌ビタマンでは「ガラスの女神」などで伝統となっている、物語重視の三角関係を描いたラブストーリーを、
むちぽちゃとした女性をいやらしく描くことに定評のある東野みかんが挑んだ意欲作。
このプロットを用いた過去の作品で共通するのが、イマイチ頼りのない主人公と、スタイルが良く能力もある女性という
ミスマッチな組み合わせによる、主人公の不誠実な両手に花を描いている点にあった。
本作では女性陣が小説家、若女将と特殊な役柄ではあるが、その非常に親しみやすいむちぽちゃな体型の影響と、
比較的好青年である主人公という組み合わせで、両手に花の物語にリアリティが生まれている。
そして互いの大切な感情を言葉にしないまま行われていく日頃の肉体関係が、
分からないがゆえに相手の気持ちを探るような感情の表現として作用しており、
そのことで主人公が恋愛に不得手で女性の気持ちを分かりかねる可哀想な人間と感ぜられるようになり、
複数人と関係している浮気な主人公でありながら、心理面での感情移入がし易くなっている。
感情移入のしやすさは、そのままHの場面での没入度に直結し、
大きな胸で母性を、もっちりしたお腹は素朴さをと二つ兼ね備えた身体を食む様にむさぼれば、
適度に硬くなりいやらしく膨らんだ乳首と共に純情なあえぎ声で快感を表す作家彼女とのセックスも魅力的に描写される。
一方で主人公を引っ掻き回す押しかけ幼馴染とのHは、実家の家業による重圧を感じさせるキャラクターで、
彼女とのHは、感情移入の先は逆に主人公よりも彼女のほうに徐々に移って行き、
本作ラストは彼女の告白が描かれ、物語は次の段階へ移ったことを宣言しつつ次巻へ続く秀逸な締めで纏められる。
恋愛に不慣れなゆえに不確かな関係のまま体を重ねて行く、タイトル通りのやきもきさせられる青春ラブストーリー。

妹!アンドロイド(5)(6)/谷澤史紀
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◇漫画専門学校生の主人公の元に突如現れた「妹型アンドロイド」を名乗る女の子との奇妙な同棲生活ラブコメディ完結編。
主人公の青年は漫画の専門学校に通う学生で、その学生生活を描いたいわゆるオタク青春もの。ただこの作品が特殊なのは
活動範囲が徹底して漫画・アニメ等サブカルチャー産業で成立った社会に限定している点である。
オタクな主人公がクラスから浮いていて、ある日とある女の子と接点が生まれるという普遍的な大筋だが、
この作品では学校自体がその種の学校であるため、主人公がオタクで浮いてしまう理由が、
彼の描くニッチな妄想エロ作品にあるという、舞台設定だけサブカルチャー方面にスライドさせたようになっている。
この「漫画・アニメが世界の中心にあるのが当たり前」という世界観と、
それに伴い「一般社会から見たオタク」という負の面の対比が一切描かれていない点が斬新で魅力的に感ぜられる。
彼ら学生を見守る大人の存在も例外ではなく、漫画家兼・専門学校講師や、漫画雑誌の編集部員など、
サブカルチャー産業で生計を立てる存在となっており、主人公の好きなアイドルもアイドル声優という徹底ぶりである。
古い年代のクリエイターには、本来ならこういった設定は世界観を狭めるものと言われ、戒められてきたものだったが、
時代の変化ゆえかサブカルチャーの多様化や新世代の価値観の違いによって受容されるようになったのかと思うと感慨深い。
そんな心地良い特殊な世界観において、更にアンリアルな象徴の様な「妹アンドロイド」なる存在を設定し、
非日常の中の日常青春エロラブコメディを描いているのが本作であり、それが最大の魅力となっている。
古い年代の者には「究極超人あ~る」の世界観でエロコメディをしていると思ってもらえれば分かりやすいかもしれない。
また、本作のメインヒロインである自称アンドロイドのキャラクターも魅力的で、
彼女が主人公と周りの女の子たちとをエッチな展開に導いて行く、トラブルメーカーとしての役割を担っており、
彼女自身も主人公をからかうようにエッチないたずらを繰り返す。
また謎の多いキャラクターでもあり、アンドロイドという設定は嘘だとしても、
先に上げた主人公の憧れの声優や、故郷の懐かしの幼馴染と同一人物か?と思わせる様な伏線が散見される。
エッチの内容は同掲載誌連載の「チチチチ」と同じく挿入無しの一線を越えない寸止め行為に留められるが、
毎話、男女共に盛大に果てる所まで描かれ、それを良い事に実の姉まで交えて行為に及ぶ時もある。
絵柄については癖の強い作風であるが、素朴な世界観にマッチしており、心地よい読後感を与えてくれる。
最終巻の第6巻ではサブヒロイン2人それぞれにこれまでの関係から一歩踏み込んだ話を用意し、
最終話ではメインヒロインとの関係に決着を付けて伏線を回収しながらも、
彼女の魅力を最後まで、ひとつも損なわずに終わらせる秀逸なストーリーとなっていて唸らされる。
新世代のオタク青春ラブコメディの終わりに寂しさと共に晴れやかな気持ちを与えてくれる秀作

けもっ娘どーぶつえん!(2)(3)/めぷちん☆
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◇金欠対策として動物達に赤ちゃんを産んでもらうため、けもっ娘に変えて夜な夜な交尾に奮闘する
動物園アニマルストーリー。2巻の帯には某人気アニメのあの書体で「きみもフレンズ」(編注:イントネーション同じ)
などと書かれており、さすが怖いもの知らずの秋田書店と思う一方、その無鉄砲ぶりにヒヤヒヤさせられる。
上記の通りのぶっとんだ設定に反して、内容は実に緻密で情報量豊富なのは1巻と同様。
コメディに見せかけて、シリアスなストーリーとなっているのも同様で、
動物の性質だけでなく、動物と人との繋がり、接し方を共に描いているのが本作の特徴である。
絶滅してしまったニホンカワウソの話は、日本での伝承を元にホラー風味で語られ、
神秘的なラストで絶滅種であることを印象的に感ぜられるように纏め上げている。
キツネの話はより直接的に過去の主人公が野生動物に餌を与えることの危険性を知らずに
とあるキツネに関わってしまう話で、妖狐となって生きながらえ主人公と再会するという
ファンタジー的な展開なのだが、人から餌を得ることを覚えてしまい、自活できなくなってしまう野生動物という
現実的な問題を扱っており、少年だった主人公が関わりを絶つためにお別れを言って立ち去り
その後ろで泣き声を上げるキツネの様子が、写実的で可愛らしい絵も相まって、胸が熱くなり、
誰もがひとつはあるであろう動物たちの思い出を思い起こさせる名場面になっている。
コメディ要素としては、あっと驚く動物たちの性にちなんだ習性がてんこ盛りで飽きさせず、
ハイエナがメスなのに何故かハーレムを作っている話では、メスにも備わっている外性器の勃起が描かれたり、
キリンの話ではメスを巡るオス同士の喧嘩と、その後のそのオス同士が交尾するという驚愕の性質や、
メスであっても発情度を測るために尿の性質を知るため、まさかの尿飲プレイをしているという性質など、
動物の世界の多様さ、広大さを感じずにはいられない物語が目白押しである。
先の動物たちをけもっ娘に変えた張本人であるマッドサイエンティスト兼園長との恋の展開も要所で描かれ、
ちょっとしたラブストーリーとなっている点にも期待が持たれる。
知識量豊富でかつ、動物との倫理的関わりなど、青少年に有益なものが多く描かれている一方、
けもっ娘化した動物たちのかなり豊満なおっぱいがあらわになる結合シーンは刺激が強すぎて、
彼らに声高におすすめができないという若干難儀な作品。

催眠エステ ~いつの間にかハダカに!?~/松任知基
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◇現代社会に疲れた三人の女性達が、とあるエステサロンで隠された本性を暴かれ堕ちて行くオムニバストーリー+8短編。
心と体の癒しを謳う怪しげな「催眠エステ」なる店のバナー広告から始まる物語は、
テレビドラマ「世にも奇妙な物語」を思わせるオムニバスダークストーリーとなっている。
女性を何らかの方法で操り、性の奴隷にするというプロットはポピュラーなもので、
近年の携帯作品などでは女体化ものに並んで発表される傾向にある。
しかし、この作品の非凡な点は、エステと称して催眠をかけ、性行為に及ぶまでの流れがほんの導入部に過ぎず、
以後催眠によって、開放された欲望のままに激しく男とまぐわい、凋落していく所までもが描かれるエロの濃密さにある。
結婚前で中出しを容認しないマリッジブルーぎみな彼女は、中出し快楽への欲求という本能を呼び覚まされ、
エステティシャンに来る日も来る日もその快楽を植えつけられて最後には…。
痴漢に遭い引きこもりになった女子大学生は、そのグラマラスな体を衆人に見られる快楽に気づかされ、
ノーパンノーブラボディコンで登校すれば処女を散らしながら乱交に耽り、紐ボンテージで自ら痴漢電車に乗りに行くが…。
不妊治療に励む妙齢の女社長は、痛みを伴う激しいセックスで排卵するというネコ科の動物になる暗示をかけられ、
不妊治療に消極的だった夫とエステティシャンと3Pに励むが実は…。
等、現実の悩みから解放され本能のまま腰を振りまくるダーティーなエロ描写は実に欲情的で素晴らしい。
本作は打ち切りだったらしく、著者のPixiveアカウントでは続編のプロットが公開されているが、
本書の評判がよければマンガ化されるそうなので、是非実現していただきたい
他の短編は別名義で竹書房「ビタマン」に掲載されたもので、こちらは打って変わって心温まるラブコメディ。
オフィスラブや大学でのキャンパスライフを描いた2011,2年当時のオーソドックスな内容で、
とある切っ掛けを通して気になる女性と親密になっていくというものだが、
物語の骨格部分が確りしており、まったく古臭さを感じないラブストーリーになっている。
いつもからかって来る同僚のOLが、主人公の転勤の前日の夜に荷物整理をしているオフィスの彼に…、
天文同好会で知識を披露する才色兼備のミスキャンパスは、寒空の下一人だけ熱心に星を観察している青年に惹かれて…、
大学の実験室で居残りをしている主人公の携帯に、同じラボの地味な研究生が間違って送ってきた写真は自撮りヌードで…。
等、先が気になる巧みなストーリーテリングは、何より女の子の魅力が遺憾なく発揮されるように作られている。
物語の締めも実に印象的で、爽やかな終わりに胸打たれる。エロも含めた漫画作品としての完成度が高いお勧めのエロマンガ

Cheers!(19)/チャーリーにしなか
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◇見目麗しい美女たちの、主人公をかけた楽しい争奪戦が繰り広げられる長期連載ラブコメディ。
お馴染みのヒロイン達が可愛らしく活躍する、ついに150回を突破した人気シリーズの最新刊。
所謂ハーレムものなのだが、エロマンガらしく各ヒロインとのハードファック&無慈悲な中出しがある点と、
ヒロイン達がお互いライバルであることを認識しており、激しく火花を散らしている点が、
同ジャンルの類似作とは一線を画しており魅力的でもある。
男性を巡る女性たちのバトルといえば、陰湿なものを思い浮かべがちだが、本作の女性たちはそうではなく、
ヒロインの多くは自らの実力で社会的立場を確立し、更に教養に裏打ちされた振る舞い、物腰を併せ持ち、
しかし、そうでない主人公のような男性を見下すそぶりなどはなく、
本来の意味での男女平等を当然のことのように気にもかけず行動する、
これぞ「淑女」だと言わんばかりのイイ女として描かれる。
これによって、現実世界にはびこるジェンダー的騒音から本作は解放され、本来の女性がもつ魅力を浮かび上がらせる。
彼女たちは実に自由に行動し、自らの仕事、役割を楽しそうにこなし、主人公と嬉しそうに接する。
そういった中での彼女たちの主人公を巡る奪い合いは、主人公への朝食が和装か洋装かで言い争ったり、
水着を他のヒロインとは違い他人には見せられないくらいの過激なものを着たり、
広報用にと一人のヒロインが新婦に扮して主人公と写真を撮れば、
別のヒロインが嫉妬して同じくウェディングドレスを着て高級ホテルで夜景をバックに主人公を誘ったりと、
その模様の可愛らしさがたまらない魅力となっている。
各話の騒動後のHシーンでもヒロイン達の可愛らしさは衰えず、昼間の凛とした態度は一変し、
主人公を立てるように淑やかに誘い、腰を密着させれば涙を浮かべてアヘ顔を晒すその様は、 誰しも彼女たちを
性的にむせび泣かせたいと思うこと必至で、主人公は絶倫なその体を激しく行使して読者に応えてくれる。
個々のキャラクターの魅力も十分で、新ヒロインの駅長が完璧すぎる故に欠点になってしまっている設定や、
多くの社会的地位の高いヒロインの登場で、年上で諭す役割だったキャプテンの株価暴落故の親近感の上昇、
そして彼女を筆頭とした、謎に包まれていた箱根ヶ崎家の存在が徐々に明かされていく物語など、
長期連載によるマンネリを感じさせない面白さは、更なる続刊を楽しみにさせてくれる。

家政婦はママ(2)/真鍋譲治
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◇一人暮らしの大学生の元に転がり込んできた年上の幼馴染は姉で家政婦で継母で…複雑な人間模様のラブコメディ完結編。
東京でアパート暮らしをしている主人公は、バンド活動に明け暮れる青春真っ盛りで、
同じバンド仲間で気の強いボーカルの女の子と付き合うことになる。
しかし姉として慕っていた憧れの幼馴染が転がり込んできたかと思えば、名家である自分の親父と結婚したと告げながら、
なぜか主人公を誘惑しては、昼夜問わずただれた男女の営みを交わす日々を送っており、
隣の部屋の関西出身の陽気な漫画家もなぜか加わわり、ばれたら一触即発の性生活を満喫していた。
90年代の王道少年マンガのノリにハードなセックス描写を加味した作風は今巻も健在で、
ヒロイン達の対面を避けながら、代わる代わるその健康的な身体を快楽で弾けさせる様は快活的で見ていて楽しい。
物語は海でのバンド合宿を挟み、新キャラの褐色従妹も摘んで怒涛の終盤へと向かう。
当初は3巻で完結の予定であったが、雑誌の方針転換の都合によって今巻でまとめられ、
メインヒロインと主人公の家系との関係など、伏線も少々早足ではあるがきっちりたたまれている。
その様子も著者らしいウィットに富んだもので、おどろおどろしい地方の人間模様を、
最終回のヒロイン4人との乱痴気騒ぎのエロス展開に持っていってしまう物語運びは流石である。
著者の同出版社から出された他作品と比べると、比較的ストレートな三角関係を描いた恋愛漫画になっており、
若い男女の青春模様の様子を楽しく眺めることができる作品になっている。

純粋セクシャルあだるてぃ/板場広志
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◇OLや人妻、パティシエなど、大人の女性たちによるちょっと変わったラブコメディ短編集。
近年の著者の竹書房での単行本では、風刺を取り入れたリアルな社会描写が特徴であったが、
今作ではそれらが抑えられ、比較的オーソドックスなラブストーリーが展開される。
しかし扱うネタやストーリーは各作品ごと個性的で、登場するヒロイン達の華やかさを彩る役目を果たしている。
女上司に無理やり一人で出張に送り出されたサラリーマンが、憂さ晴らしに温泉に赴きある女性と出会う話、
暑い夏の日の外回りの途中、甘味処で宇治金時を食べているサラリーマンと出会った落ち着いた人妻の話、
急遽出来た年末休みに、同じく暇をもてあましていた地味OLとなんとなく遊び歩く話など、
地味でシンプルな物語だが、赤の他人同士の出会いの様子、会話の自然な流れや、
徐々に親密になって行き、打ち解け合って距離が近くなる様子、そして少し強引に見える初Hの様子などが、
とてもリアルに感じさせられ、現実に即した物語が羨ましさと共感とで心地よい読後感をもたらす。
一方で突飛な設定の物語も幾つもあり、気の強そうなギャル3人にカラオケの個室で無理矢理犯される話や、
未亡人が高齢で松茸採り名人だった男性の介護をする話、
露出好きのパティシエの彼女がボディペイントで売り子をする話などは、
非現実的な話でありながらも、前述のような作品にはさまれたりリアルな描写で描かれると、
ひょっとしたらあり得るかもしれないという考えが過ぎってしまう。
そんな中、一遍だけ紛れた携帯コミックの様な突拍子もない話「世にも奇妙な鉄人レース」が異彩を放っている。
竹書房では同じような短編集が数多く出されているが、
著者の本は会話や人物描写に秀でており、その自然な物語運びが著者の魅力なのがよく分かる作品集

イケナイ菜々子さん(1)/あさぎ龍
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◇出会い系で知り合ったアラフォー女性と運命的な再会を果たす妙齢女性たちの大人のラブストーリー。
見た目も幼く、頼りなく見える大学生の青年が、出会い系サイトで知り合ったアラフォーヒロインと肌を重ね、
徐々に親密になっていく物語で、著者の百合ものと並び得意とする妙齢ヒロインもの。
漫画アニメのアラフォーといえば、設定年齢に反して見た目は若く見えるママさんキャラが定番だが、
著者の描く女性は紛うことなき妙齢の姿で、目もとの窪みや豊麗線に乳房のたるみ、浮き出た胸骨など、
エロマンガのヒロインとしては挑戦的なキャラクターデザインとなっている。
掲載誌であるヤングコミックにしては直接描写が多めで、アラフォーヒロインの裸体が存分に描かれており、
その際に演出として挿入され本作の特徴となっているのが、透明感を感じさせる光の表現である。
窓から差し込む太陽光、ベッドルームのスタンドランプの光などが肌に当たり、白く抜けるような透明感を表す表現は、
まるで春の木漏れ日の光のような印象を与え、年齢の離れた恋物語にただよう下世話な印象が薄れ、 おとぎ話や
ファンタジー漫画を読んでいるかのような印象となり、主人公達の色恋模様に自然と共感を得るようになってくる。
物語も少女漫画のようなロマンチシズムを感じさせ、運命的な再会の場面でのLINEのやり取りは古の文通を思わせるような
モノローグによって表現され、と同時にそのスマホの操作の最中に2人が同じ屋根の下へ集う
極めて現代的な物語展開が実にユニークである。

熟花の告白 ~オンナたちの都市伝説~/大見武士
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◇一堂に会した女性達が語る、多種多様な曰くの性体験を描いた再現マンガ短編集の第2弾。
前作「淑女のひめごと オンナたちの都市伝説」の続編で、
編集部に集まった女性達本人が語る過去の変わった性体験を、その座談会の様子も含めて描いた再現マンガ。
奇妙な体験談ではあるが本人自ら語っているので、タイトルにある都市伝説とは趣が違うので一応注意のほどを。
今作は「浮気」と「性癖」をテーマにそれぞれ4人づつが語っているのだが、その歪んだ物語はシリーズ随一。
親子ほども離れた年下の、知り合いの子供を誘惑して一線越えてしまうという話はほんの序の口で、
各話、実話を基にしたフィクションであろうと予想はすれども、その豊富で歪んだ性の描写に感心してしまう。
住む団地の9割が、夫の勤める会社の社員の家族だと言う女性の話は、
その環境ゆえに奥さん方のコミュニティも夫と同じ階層構造を持つ息苦しいもので、
転勤してきた彼女の場合は立場が弱く、「上」の奥様から誘われるがままにヨガ教室に通うようになるというもの。
その奥様とヨガの先生が浮気をしていて、それを偶然覗いてしまったことから、
そちら側に引き込まれてしまうというシチュエーション自体は珍しいものではないが、
奥様コミュニティの関係によるストレス、夫とのセックスレスというディテールの細やかさで、
現代社会の裏側、歪みを生々しく浮き彫りにして行く展開は目を見張るものがある。
奥様方からの嫌味、行き場のない性欲、目の前で展開される背徳的な性の営みと、
追い詰められた彼女はいつしかそれを除きながら自らの卑部をかき回すようになり、そして…。
ストレスとセックスレスに悩む女性の話はもう一編あり、
こちらは思いつめた末にネットで知った女性用性感マッサージを利用した時の様子が描かれ、
同じく女性の悩みが性の歪みとして噴出した内容になっている。
そして極めつけは後半の「性癖」をテーマにした各話。
それぞれ「ネット露出」「三者性愛」「身長差性愛」「体臭フェチ」と特殊性癖の持ち主の話になっており、
それを自覚しながらも特殊故パートナーがいない(もしくはうまくいかない)為、
満たされない実生活を余儀なくされる様子が描かれる。
そしてある時その巡り会わせが叶いその性が解放されると、
彼女らは今まで満たされなかった分、前後不覚になるほど歓喜し快楽を貪り、腰の快感に打ち震えて絶頂に浸り、
ある者はパートナーを得、ある者は逆に失い、ある者は通常の性が完全に欠落してしまう。
著者は他社で「ふしだら」シリーズという女性の黒い内面を描いた作品を発表しているが、
その影響からか、彼女たちの内面に起因する顔の表情、
お預けを食らってテンパる様子や、性が満たされオルガズムの意味ではなく頭のほうが「イッて」しまう様子など、
少々サイコホラーの匂いすら感じられる程の鬼気迫るエロティシズムの要素を完璧に描いてしまっている。
おまけマンガでは本編とは違ったおちゃらけた著者の近況が語られるのがシリーズの恒例になっているのだが、
今作では著者の情緒不安定ぶりが描かれ、和姦好きの著者の健康が削がれていないか不安になってしまう。
もともとダークなテイストだった本シリーズだったが、著者のキャリアからまた一段レベルアップした作品になっている

グリーングリーン/美波リン
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◇人里離れた山奥で昼は農作業、夜は美人姉妹とセックス三昧な日々を送る農業エロマンガの振りをしたカルトエロマンガ。
農業大学に通う青年3人が、相席居酒屋で一緒になった美人3人とそのままお泊りまで行き着き、
姉妹の用意したひとつの部屋で酒盛りがてら、会ったばかりの彼女らと肌を交わらせる。
次の日の朝、主人公が目を覚ますとそこは見知らぬ沢の辺で、そしらぬ顔の彼女達に有無を言わさず農作業を手伝わされ、
青年3人はようやく自分たちが拉致、軟禁されたことに気付かされる…。
タイトルや表紙からほのぼの農業ラブコメディを予想していた読者に、いきなり目を丸くする展開で始められる本作は、
題材に農業、畜産業とそれを糧としている人々の暮らしを大筋では扱っている。
しかし徐々に明らかになって行く彼女らの村の暮らしは、人里離れた田舎だからという理由だけでは説明できない、
不可思議な習慣に包まれていることに気付かされる。
彼女らの家には男性の影が見えず、農作業が終わると夕食に豪華な旬の食物で迎えられるが、
夜には何故かまたセックスを求められ、さらにゴムを付けることを拒否される。
彼女があっけらかんと言うには女ばかりで婿も来ない山奥の村で、新しい血を取り入れるための行為なのだそうであり、
その様子は卵を産むため飼っている雌鳥と、時々増やすために借りてくる雄鶏のエピソードで比喩として語られる。
彼女ら三姉妹の母親までも夜の営みに加わり、いよいよ持って原始的な生活の一員に加えられる彼らは、
初めの内こそ村から脱出しようと画策するも、筋肉の引き締まった酪農家の娘達や、
クールな双子姉妹ら近隣住民まで加わった毎夜繰り返される酒池肉林の虜になってしまう。
本作が奇妙なのは、過疎化の進んだ農村で婿を迎えるという、普通考えられるストーリーにあえてせず、
乱交に明け暮れ、誰かも分からない子種だけ貰って人口を増やすという不道徳的な慣習で村を描きながらも、
それが許容される普遍的なものであるかのように作品内で扱っている点である。
これは分かる人には分かるが、カルト宗教の色を濃く感じるものであり、ジャンルとしてはホラーで扱われる題材である。
物語は最終的に主人公と三女のヒロインの恋愛の成就として帰結するが、
多くの謎が解明される前に、オカルト、ホラーになりうる要素をバッサリ切り落としたまま終幕する。
一見すると農業ラブコメディに見えるが、これはフィクションとしては少々危険な描かれ方で、
この作品を読んで新興宗教に対する免疫が薄れてしまう若い人が出てこないか心配になってしまう。
いまいちピンとこない人は、彼女たちが犯罪を犯していることだけでも気に留めておいてほしい。
とここまでが長い前置きで、それを踏まえて言えば本作は、
青い空豊かな緑に囲まれた環境で、美しい女たちに支えられながら昼は農作業に汗を流し、旨い料理で腹を満たせば、
夜は子作りのために中出し三昧で、激しく貫き彼女たちを艶やかな音色で啼かせた後、疲れに身を任せて眠りに入るという、
人の営みとして最高に贅沢な生活であり、男なら一度は憧れるであろう夢の様子が描かれている。
それは自給自足で現代社会の悩みから隔離され、さらに田舎の問題までもスポイルしてしまった良い所取りの世界であり、
つまり本作が本当に扱っている題材は、エロマンガ的ファンタジーなのである。
内容に対するだまされない前知識が必要で、暗に犯罪が許容されている点を見抜くことが求められる、
本当の意味で大人が読んで楽しめるエロマンガ作品。



  • 最終更新:2018-02-12 02:56:27

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